IT大国インドでインターネット接続

グルガオンの自宅でノートパソコンをネット回線につなぐことにした。

 

一人目の中年男は約束の時間に二時間遅れでやって来たが、あっという間に

壁工事を終えると「もうすぐ別の人間がお宅を伺いに来ます」と言い残して

帰ってしまった。

 

二人目の小僧はそれから三時間後に現れた。しかしこの小僧もWiFiのデリバリー

だけ済ますと「取付業者は後から来ます」と言って、すぐに立ち去ってしまった。

 

通信会社との電話でのすったもんだの末、数週間後に三人目の男が派遣されて

きた。この青年はWiFiの配線が専門で、見事な手際で仕事を終えると、

「接続確認のためにノートパソコンを貸して欲しい」と言った。

 

しかし私のノートパソコンは会社に置いてある。

私はこの青年が気の毒になったものの、WiFiを取付けるためだけに何日も欠勤

する訳にいかなかった。「今から車で会社に行ってパソコンを取って来るので、

30分自宅で待機して欲しい」私はそう言い残して慌てて玄関を飛び出した。

 

ところが、行きも帰りもいつものごとく大渋滞。しかも会社に到着するや、

四方山のインド人から長談義に引きづり込まれ、自宅に戻ってきたのは二時間後。

さすがに温厚だったはずの青年も、床にへたり込んだまま憮然としている。

 

すでに夜も更け始めている。青年は私のパソコンを手にすると直ちに接続確認を

始めたが、WiFiはうんともすんとも言わない。青年は、「屋外にある配線システム

に欠陥があるに違いありません。後日、専門の工事屋を派遣しましょう」と言って

引上げってしまった。

 

再び数週間後、四人目の工事屋が約束より半日も遅れてやってきた。

叱りつけたところ、彼も大渋滞に巻き込まれたらしい。であれば致し方あるまい・・・ともあれ、彼が梯子に登って、玄関上の配線システムをこねくり回しても

事態は解明しない。

「ミスタール!問題はご自宅の配線システムにあるのではなく、マンション全体の

統合通信制御室にあるようです」

私と男はマンション一階にある統合通信制御室に向かったが、「こんなところで

なにをしているんだ!」と管理人。

「2ヶ月もネットがつながらず・・・」

「ここに入る入門許可を取ったのかね?」

「もちろん取っていません。許可を取るのにどれくらいかかるんでしょうか?」

「たぶん2週間じゃ」

「インドの2週間ということは、最低1ヶ月待ちということですな・・・」

私は肩を落とした。

 

こうして5週間後に入門許可が下り、さらに高度な技術を持つ五人目の工事屋が

派遣された。すでに通信会社にWiFi設置の依頼をしてから3ヶ月以上が経って

おり、私の頭の中では、もはやインターネット接続のことなど完全に消え失せて

いたが、とうとう接続は実現したのだった。