インド市場の攻略!ワイルドさを取り戻せ!
インドに1週間滞在となれば、日本人出張者のうち8割程度が下痢などの
体調不良をきたす。高級ホテルに宿泊し、連日日本食を食べていても、
である。
なぜか?私の分析では、たぶんに精神的なものに起因している。
かつての私もそうだったが、生のインドに触れることによる緊張感と疲れから
ノックダウンとなるのだ。カレーの香辛料が多少胃にもたれるというのは
あるにせよ、人は、乞食や、水牛や、子豚や、狂犬や、鍋にたかる蝿や、
埃をかぶったあばら屋や、路上の終ることなきクラクションや、土埃や、
暑さや、寒さや、騒音による寝不足や、インド人の長談義や、切符売場の
大行列など複合的な要因が重なり、みるみるうちに体力を低下させ、
下痢の洗礼を浴びる。つまり、残念ながら逃げ道はないと言うことだ。
首都ニューデリーは、砂漠に近い場所にあり、空気汚染が甚だしいのが
最大の難点と言える。初めてインドに出張に来たR&Dの所長と主任研究員は、
SARSの時に流行った防塵マスクを持参し、市場巡回の際は肌身離さずマスクを
付けていた。さすがに研究員だけのことはある。
それでも二人とも突発性の細菌性下痢を避けることができなかったのは不憫と
しか言いようがなかったが、後から反省するに、その原因は私がドライバーに
命じてデコボコ道を何時間も走らせ、トンビが上空に舞う産業廃棄物所など、
デリー近郊でもっとも汚い場所をご案内したことが原因であるに違いなかった。
二泊三日の毒にも薬にもならない出張を組んだ彼らに対して、少しでもインドに
対する理解を深めて頂こうという配慮がアダとなった訳である。その後彼らが
インドの地を踏むことは二度となかった。
たった1週間の滞在で悠久のインドを「市場調査」しようとした20代後半の
草食系商品企画マンもいた。彼はインドのユーザー特性はとうだとか、中産者
階級はどうだとか、エリア戦略はどうすべきかといった御託を並べ始めたので、
ヤムナー河にでも放り込んでやろうかと思ったものの、そんな時間はなかった
ので、オールドデリーのドヤ街散策で勘弁してやったものの、私がi-Phoneを
掏られるという有様だった。
これからは新興国の時代である。多くの先進国は人口減であり、多くの企業
(特に家電・自動車メーカー)は新興国進出が大きなテーマになっている。
しかしライバルはバイタリティーの塊で、「初めに行動ありき」の韓国勢である。
開発のスピードも決心のスピードも早い。製品・サービスを売ることになる
地元の消費者は先進国にましてしたたたかだ。
要するに、理論や理屈の上で胡坐をかいているだけでは、グローバル社会の中で
生き残るのは困難な時代になってしまったということである。日本国は今から
ワイルドさを養うことができるだろうか?