六本木のガイジンキラー

ところはオーストラリア。

私が職場でパソコンに向かって仕事をしていると、ブライアンがやってきた。

「ちょっといい?相談があるんだけど・・・」

「そんな顔して、どうしたんだよ」

ラグビー選手のような大きな体格にも関わらず、金髪でブルーアイのブライアンは

青ざめている。

「以前俺が東京に出張した時に、六本木で遊んだ話をしたのを覚えているかい?」

「ああ、覚えているよ。ガイジン好きの女が集まるバーかどこかで、若い女と

意気投合して、そのままホテルに行っちゃったって話だろ。ホテルでその女と

はしゃいでいるバカみたいな動画まで見せてくれたじゃないか?」

「実はその女から2ヶ月ぶりにメールで連絡があったんだよ」

「名詞でも渡したのか?」

「ああ」

「東京出張の度にその女と連絡を取ろうと思った訳だな」

「まあ・・・」

「それで?」

「俺の子供を妊娠したけど産んでもいいか?と言っているんだ」

「嘘だろ!?」

「やっぱりそう思うか?」

「もちろんだよ」

「日本人の女でも嘘を付くことがあるのか?」

「悪いけど、いくらでも平気で嘘を付くよ」

「実は俺も嘘だと思ったから、『俺の子供の訳ないだろう!』って言ってやったん

だよ。そうしたら、この女、そんなに疑うんだったら出るところに出てもいいって

言うんだ」

「最悪だなあ」

「そうなんだよ。名刺を渡してるし、彼女の携帯にも俺の動画が入っている

から、フィアンセにバレたら洒落にならないよ」

「結局、今はどういう状況なんだ?」

「何度かメールをやり取りした結果、2週間以内に100万円振り込んでくれれ

ば産まないであげる、というところまで来ている」

「払うのか?」

「ああ・・・」ブライアンは肩を落として続ける。

「彼女が嘘を付いていることは分かっているんだけど、毎日会社のパソコンに

女からのメールが届いて揺さぶられ続けると、ひょっとして本当に妊娠して

いるんだろうか?と不安になるし、100万円ですべて方が付くならそっちの方が

いいって思えてくるんだよ」

「ずいぶん性の悪い女がいるもんだな」

「ああ。まいったよ」

 

今回のケース、より罪が重いのはどちらだろうか?

(酪農国とは言え)白人というステイタスを自覚し、大和撫子の

白人コンプレックスに付け込んだフィアンセのいるブライアンだろうか?

 

それとも好奇心に溢れる異国からの訪問者の下心を逆手に取り、自分も思う存分

楽しんだ挙句、嘘八百で恐喝を行い、日本人全般に対する外国人の心象を悪くさせ

かねない六本木ガールだろうか?

 

罪の深さで言えば、詐欺・恐喝まがいの六本木ガールという気もするが、異国人に

よる大和撫子への破廉恥な行為に抑止力を与えたという点で、彼女の罪が軽減

される余地はないだろうか?

 

そう考えれば考えるほど、お互いがお互いの動画を撮って喜んでいたというバカさ

加減を含めて、ふたりは同じ穴のムジナであるという気がするのである。