ホテルパラゴン
世界の奥地はともかく、大都会で汚い安宿と言えば、インド・コルカタにある
ホテルパラゴンが著明度と汚さの点で際立っているだろう。
コルカタはかつてはカルカッタと呼ばれ、「世界で最もダーティーな街」との
汚名を与えられるほど、インドの数ある大都市の中でも、喧噪と猥雑さが際立って
いた。
そしてこの街には安宿が集まるサダルストリートという有名な通りがあり、
世界中のバックパッカーやヒッピーの巣窟となっているのだが、このサダル
ストリートの片隅にホテルパラゴンというどうしようもなく汚いホテルがある
のである。
(これだけ汚いにも関わらず、屋号をホテルとしているところに、オーナーの
粋を感じるのは私だけであろうか)
今でも相部屋は200円くらいで泊まれるようだが、私が初めてここに泊った
1995年もそんな値段だったように思う。
当時の私はノミだか、シラミだか分からぬバカ垂れどもに一晩中襲撃された挙句、
身もよじれるほどの腹痛が襲ってきたので共同便所に駆け込んだが、トイレット
ペーパーがないのは言うまでもなく、断水でにっちもさっちもいかず、高熱まで
出てノックダウンという始末だった。
(要するに、ここに泊まったというよりも、一晩中起きていた訳である)
私はこの20年間でバックパッカーから企業の駐在員に変身を遂げ、インド人の
部下と共にスーツ姿でコルカタを訪れる機会を得た訳だが、久方ぶりにホテル
パラゴンを覗きにいくと、相変わらず汚いこと!
どうりでインフレなどどこ吹く風で、20年もの間良心的な値段設定を維持して
いる訳である。
バックパッカーの登竜門ともなっているホテル・パラゴン。粋なオーナーには
いつまでもこの経営スタイル(他社を寄せ付けない圧倒的な汚さと安さで勝負!)
を貫いて欲しいものである。
サダルストリートの与作。