聖地エアーズロック
富士山に行ったことのある日本人が少ないように、エアーズロックに行ったこと
のあるオーストラリア人にお目にかかることはほんとんどない。
「もう写真で知ってるよ。日帰りで行けるところじゃないし、2泊3日で行く
だけで何百ドルもかかってしまうしね。それにただの岩でじょ?」ということ
なのかもしれない。
私も初めてエアーズロックに行くまではそんな人間のひとりだった。
ところがどうだろう、エアーズロックの素晴らしいこと!
私にとって、再訪したいという観光名所や景勝地は少ないが、エアーズロックは
是非また行ってみたい!と思わせる場所だった。
特に感動したのは大空だった。青空の下、あるいは今にも雨が降り出しそうな
悪天候の下、もくもくもくと大きな入道雲が漂っている。
美しい大空で感動したのは、チベット(ヒマラヤ)とケニア(サバンナ)に次いで
3度目だった。
宮崎駿はこの地よりインスピレーションを受けたらしいが、まさにこの地の空は
天空という言葉がふさわしい。
「風の谷にナウシカ」の舞台となっている「カタジュタ」も必見。映画ででてきた
ような巨大な虫のような形をした赤褐色の巨大な岩がモコモコとしている。
ウルルに2泊3日できるならば、キングス・キャニオンもお勧め。
トレッキングだけでなく、数時間バスに揺られならがオーストラリアの内陸部の
広大さや壮大な眺めを楽しむことができる。
ただし、山道を2時間以上トレッキングするので、足腰の弱い人にはきつい
だろう。
唯一残念だったのは、ウルルでちらほら見かける原住民・アボリジニの表情が
暗かったことだ。楽しそうな顔をした彼らの顔を見ることはできなかった。
タイの首長族でも、ケニアのマサイ族でも、海外からの旅行者相手にヤラセを
演じている原住民の顔には通例笑顔の裏に「影」のようなものがあるが、
私が見かけたスーパーで買い物をするアボリジニの場合は、誰にヤラセを演じて
いる訳でもないのに、悲しい歴史的背景の下、とても暗い影を落としているよう
に見えた。
エアーズロックはアボリジニの聖地であるため、素晴らしい景観を眺めながらも
複雑な思いがする。そのように思いながら、都会のオーストラリア人がここに
来ないのは、単に上述の理由だけではなくて、もっと深い心理が横たわっている
ような気がするのだった。