英語のプレゼン力を強化する

あなたは英語のプレゼンテーションができるだろうか?

 

グローバル時代を迎えた今、職場などで英語を使う機会は益々増える

ことだろう。

しかし、英語のプレゼンは、多くの人にとってチャレンジングな試みに

違いない。場数を踏まぬうちは、人前でアカペラを歌わさせるようなもの

ではないだろうか?

私も場数をこなす前は、目の前でふんぞり返ったアメリカ人が私の英語に

耳を傾けていると想像しただけで胃が痛み、それ以上に日本人ギャラリーの

目が大いに気になった。普通、聴衆の立場である人間は、他人の英語力を

品定めするものだ。

 

逆に、他人(しかも英語力の弱い人間)の英語のプレゼンを聞くことほど

滑稽かつ残酷なことはない。

かつて私の勤めていた会社には、英語のできるうるさ型の営業部長が

いたが、彼など英語力の弱い人間を会議後に呼び出し、「お前の英語はクソだ」

と言うものだから、プレゼンターは最初から緊張してしまい、お客である外人の

顔でなく、営業部長の顔を見てプレゼンする有様。

 

なかでも英語力の弱いN氏は恰好のターゲットだった。

「我が社には3つの戦略があります。高技術、低価格、信頼のサービスです」

N氏は逐語訳したパワーポイントのスライドをやっとの思いで英語で言うと、

今度は過去5年の売上推移を示す棒グラフの数字を棒読みする。

「2010年の実績は31542台。2011年の実績は42009台・・・

2014年の実績は65000台。2015年は・・・」

「もういいがな、数字なんてスライドを見てりゃ分かるんだよ!売上は右肩上

がりに伸びてますって言えや!」と営業所長に怒られる。

「最後になりますが、I want to give you this….this….」

「おめーは、お客さんになにをあげてーんだよ!」

「えーと、えーと、英語が出てこない。出てきません!」

「もしかしてカタログのことか?」

「はいそうです」

「じゃあ、I give youカタログって言えや!」

「分かりました」

「分かりましたじゃねーんだよ!おめーって奴は、カタログみてーな日本語すら

出てこねーのか!!!」

「はっ、はい。それでは早速、Mr. Yamadaにバトンタッチします!」

「私、ミスターじゃないですけど・・・」N氏は後輩の派遣社員にも容赦ない

突っ込みを受け、最後の最後までエライ目に遭うのだった。

 

しかしこれを他人事と笑ってばかりもいられない。英語のプレゼンは必要以上

に緊張するものだ。

対策としては、事前準備を入念に行うしか方法はないだろう。

TOEICが800や900台であっても英語の気の効いたアドリブなどまず出ないことを

考えれば、それ以下の英語力の人であれば尚更事前準備が重要だ。

 

<事前準備の心得え>

①パワーポイントの資料を(分かりやすい英語で)万全にする。 

 

②プレゼンを聞いている外人は、日本人の英語を聞くより早く、瞬間的に画面の

文字(英語)を見て理解するから、正確な言葉で書いておけば十分な

コミュニケーションが図れる。

(その意味では、発音はあまり気にしなくてもよいといえる)

 

③上記のパワーポイントを喋るためのメモ書き(あんちょこ)を作成し、

それを丸暗記することが肝心。

最初は手間に感じるだろうが、以上の準備を繰り返しているうちに、準備に

要する時間が格段に短縮され、プレゼン自体のスキルアップにつながる。

 

なお、上述した「我が社には3つの戦略があります。高技術、低価格、信頼の

サービスです」を日本人がプレゼンする場合、

「Our companies have 3 strategies. High-tech, Low-Price, Reliable Service」

というような逐語訳プレゼンとなるだろう。

 

一方、西洋の標準的なビジネスマンであれば、スライドを棒読みするのではなく、

たとえば「我が社は創業以来、ずっと基本戦略を変えていません。なぜならこれら

3つの戦略によって消費者から支持を受け、ひいては社会貢献しているからです」

といったように付加価値を加えるのが一般的。これによって、そのプレゼンが

ずっと引き締まる印象を与えることは言う間でもない。 

 

多くの人はパワーポイントで資料を作った所でおしまいであるが、それでは

シドロモドロの説明で終わることしばしば。②の過程は手間であるが、これを

やらない限り、美しい英語のプレゼンはできないはずだ。

 

我々日本人の場合、まずは逐語訳プレゼンを確実にこなせるレベルに達し、次の

段階として付加価値プレゼンを目指す必要があるだろう。