水に関する基礎知識

我々は生まれてこの方、日々水を口にしている割に、水についてほとんど

知らないのではないだろうか?

海外に行くと、その土地の水が飲めるか?ということは大いに気になる

ところであるが、まずは水の基礎知識について少々。 

 

水は天からの恵みである。天から降り注がれた雨や山で雪解けた水が川と

なり、あるいは大地に染込んで、飲み水の源となる。

 地球上の水は九十七パーセントが海水であり、淡水は残り三パーセントに

すぎないが、そのほとんどが氷河や氷山として存在している。

河川水、地下水浅、淡水湖が、人間にとって直接的に利用可能な水である

が、これらは総量の一パーセント未満であり、飲料水として利用できるもの

はさらに少ない。

 化学式でH2Oと呼ばれる水素と酸素の結合物が、人の生存にとって欠かせ

ないものであるのは、人体の六十パーセント以上が、血液や体液や唾液や

リンパ液などの水分でできているからである。

約四十リットルもの水分が体内を一日五回から七回駆け巡っているが、

通常、成人男性であれば一日に一.五リットルから二.五リットルの水分を

摂取しており、同時に同じだけの水分が汗や尿や便となり体内から排出

されている。

 

水には硬度がある。硬度とは水に含まれるカルシウムとマグネシウムの

濃度で表される指標のことだが、硬水、軟水と呼ばれように国や地域に

よって硬度は大きく異なる。

何故なら、雨水や雪解け水が大地にしみ込み、川となって流れていく過程

で、周囲の地層からカルシウムやマグネシウムといったミネラルが水中に

取り込まれていくことになるのであるが、地層を形成している物質の質量は国や地域によって異なるからである。

それと同時に、川や地層における水の滞留時間の長短によって、水中に

吸収されるミネラルの質量の大小が変わることも、硬度に対して影響を

与えている。

例えば、島国である日本や英国では、元々雨が多く、地層におけるカルシウ

ムの密度は低い。その上、火山性の地層であり土地は狭く斜面が急であるこ

とから、川の水が海に流れるまでの時間は早くなり、結果としてミネラルを

あまり含まない軟水ができる。

それに対して、欧米などの大陸で多くみられる石炭質の地層では、地下水は

多くのミネラルを含んだ地層を流れている。地表の川についても大陸をゆっ

くりと流れて海に辿りつくため、ミネラルが多く溶け込んだ硬水になるのである。

インドの場合、全体的には硬水の地域が多いが、西部のムンバイやプネーの

ように軟水の都市もある。とは言え、インドは水質に関しても多様性のある

国で、同じ都市内でも、場所によって硬度はまちまちであり、正確な水質を

知るには計測器で測定するしかない。

硬水と軟水は、あくまで硬度の問題であり、水の純度を表現したものではな

いが、一般的に軟水はきれいな水、硬水は汚い水と言うことができる。

真水である雨水は、ミネラル成分が含まれていないため味がせず、飲料水

として飲むことはできない。適度のミネラル成分が水中に入っていることが

おいしい飲料水になる条件である。

水は食文化にも大きな影響を与えている。軟水は料理に適すると言われ、

日本では炊飯や吸い物、茶の文化が発達した。硬水はあまり料理に適さず、

欧米では水の代わりに牛乳やワインを用いた調理法が多い。シチューが

硬水に適しているのは、硬水に含まれる豊富なミネラル成分により、

具材のたんぱく質が固まり、旨み成分が溶け出さないという利点が

生まれるからである。コーヒーも硬水の方が苦味が出て旨いものとなる。