【海外で働く!就活日記⑧】 履歴書とカバーレター

こうしてなんの進展もないまま3ヶ月が経ってしまったが、

そんな折、病気の父親を介護する母親を手伝うため、

急遽帰国することになった。結局、父親が亡くなる2ヶ月間、

横浜の実家で暮らし、その間インターネットでの就職活動を

進めることとなる。 

オーストラリアの求人サイトの希望職種欄に「Marketing」と

インプットすると、翌日から一日20社程度の募集案内が

メールで届き、私は複数の会社に応募した。

 しかし、数週間経っても、先方から返事がないか、たまに返事だ

あっても断りのメールであった。

そこで私は2つの重要な点を見落としていたことに気づいた。

 ①西洋での「Marketing」とは、日本で言うところのマーケティング

(業務全般)の仕事ではなく、大きくは宣伝の仕事を意味する。 

②少なくとも豪州では、会社に対して履歴書だけでなく、カバーレター

(自己アピールを書いた書類)を送る必要があること。

 ①に関しては、日本の企業では、たとえば文化系出身の人間であれば、

マーケティンや営業担当という名の下に、戦略策定から日々の受発注、

コピー取りまで何でも屋のような仕事をするのが普通であろう。

しかし、豪州では、Marketing, Business Development, Demand Planner,

Inventory Controller,Product Specialist, Data Entry, Analysis Job,

Marketing Job, Logisticなどなど、日本のサラリーマンであれば

ひとりで抱えるような仕事が細分化されているのだ。

 私は宣伝や広報の仕事の経歴がないので、「Marketing」の仕事を

応募しても、なんの引っ掛かりもなかった。

こうして、私はまだ振出しに戻り、自分が対応できそうな案件を見付け、

履歴書を一日に2つから3つ送り続けることになる。

 

ある日、私は気分転換のため横浜中華街を歩いていると、世相を

反映してか、やけに占いの館があることに気づく。

「運試しに手相でも見てもらうか」

現れたのは、日本人か中国人かよく分からない婆やだった。

「あなた自分に自信がなくなってるね。自分を責めてばかりいる。

そんなんじゃ、いい結果はでないよ!自信がないから、大胆さがない。

いいもん持ってるんだから、自信もってがんばんなよ!」

「バカ野郎!この素人占いめ!大胆さがないだど?こっちは7000

メートル級のヒマラヤ山脈で狂犬に何度も噛まれたことだってあるんだよ!

しかも3度も4度も自信がないっだって?こちとら、2年以上も

収入なしなんだよ!自信なんかある訳ねえだろうが、ボケ!

畜生、鑑定料の1000円返せ!あーそれにしても、なんの成果も

ないまま5ヶ月も経っちまった。厄年は終わっているのに、歯車が

合わねえなあ・・・」

私はそう呟きながら横浜中華街を後にした。